知識人たちの閉所恐怖症 4
「いたるところ水だらけだったよ」
・・・とミロス・クロフタは回想します。
1935年、ユーゴスラヴィアのリュブリヤナの製紙工場での話です。
工場内はいつも濡れていました。
常に水がどこかしらのパイプから霧のように噴き出し、大きな桶から滴り落ち、バルブから漏れています。
この水が当時彼の抱えていた問題でした。
クロフタは地元の大学を技術系の学生としては史上最年少で卒業しました。
ブロンドで、背筋のしゃんと伸びた潔癖な青年でした。
西ドイツのダルムシュタットにある当時有数の工科大学で製紙技術の博士号取得のために勉学をつづけ、大学に通うかたわら、この工場の工場長技術補佐として働いていました。
生産コストを削減するのが彼の仕事でした。
会社の所有者の息子だった彼は当然そのうちもっと重要な仕事につくものと期待していました。
そして、いつも水に足をとられては転んでいました。