日本の民話 2
じいさんはとなりの新仁衛門どんの店にも行ってみましたが、そこも売る米はないという返事。
ところが、しんにょむどんの店にはタカンバチが三つぶらさがっていました。
「しんにょむどん、その笠を売ってくえんか。」
「ああ、どうか買うてくれ、じいさん。」
「せっかく安房まで来たからには、ばばにも何かみやげを買うてもどらんといかん。この笠は三つでなんぼか。」
「三つで百文。」
こうしてタカンバチの笠を三つ買って、じいさんは、すたこら、すたこら、帰って行きました。
ひゅう、ひゅう、岳おろしが吹いてくる寒い日でした。じいさんは急ぎました。
ところが途中の道ばたに地蔵さんが三つたっていました。じいさんは立ちどまって、
「地蔵さんも寒かろうが」
といいました。
そして持っていた三つのタカンバチを地蔵さんの頭に、一つずつかぶせて、あごのひもも結んでやりました。
それからまた、てくてくと歩きました。
「ばあさん、今じゃった。」
「ああ、じいさんか。寒かったうが。はよ上りなさい。米は買うてきもしたか。」
「いや、じつはネ、ばあさん。米がなくて、ばあさんのみやげにタカンバチを三つ買うたが、野っ原の地蔵さんが寒かようと思うて、三つともかぶせてきた。」
「ほなア、しかたなか。地蔵さんにあげたのなら、よかことじゃからネ。ほいなア、米もなかばってか、芋でも食て年をとろう。」
じいさんとばあさんは芋を食って、やがてやすみました。
夜中に、じいさんが夢を見ました。
「じいさん、じいさん、米をあげよう」
という声です。じいさんは、はっと目ざめました。